2013/09/24
日本を復興させる、あたらしい農業ビジネスをはじめよう
東日本大震災のあと、イチゴづくりを始めてから、もうすぐ2年になる。私の仕事は、IT企業と農場の経営である。
宮城県仙台市から南に約30km離れた山元町に、私の農場はある。
そこで収穫された最高級イチゴは、「ミガキイチゴ」というブランドとして、いちばんいいものは新宿の伊勢丹百貨店などで1粒1050円、6粒5250円(税抜)で販売している。
女性を中心にご好評いただき、2013年は50トンの出荷を予定している。
また、日本のイチゴづくりを世界に輸出しようと思い、西インドにある高原地帯マハーラーシシュトラ州にも農場をつくった。現地の人と協力しながら、日々生産している。
今は試験的に1000平米で展開中だが、計画では今年4000平米まで拡大、目標としては5万平米までひろげていくつもりだ。
東京ドームが4万6755平米だから、それよりも大きい農場がインドにできる。
ワクワクしないだろうか?
インドの次は、サウジアラビアに進出する予定もある。
■故郷を復興したくてハウスを建てた
私が農業ビジネスを始めたきっかけは、2011年3月11日に起こった東日本大震災で、
故郷の山元町がめちゃくちゃになったことにある。
仙台空港に大津波がやってきて飛行機が流されていく映像をTVで観て、沿岸部にあった山元町がどうなっているのか、気が気ではなかった。
連絡がつかなくなった両親の安否を確認するために、僕は車いっぱいに支援物資を積んで、東京から現地に入ることにした。
そこで目に飛び込んできたのは、地震と津波であらゆるものが失われ、生命が感じられない土地になってしまった……変わりはてた故郷の姿だった。
山元の名産品のイチゴを産み出していたビニールハウスは海の近くにあったので、壊滅的な被害をうけた。
私のおじいちゃんはイチゴ農家をやっていたから、ちいさいころ、よくハウスに連れていってくれた。ハウスのなかで食べたイチゴの甘酸っぱい味、葉っぱのかおり……そんな記憶と結びついていた風景が、消えてなくなってしまった。
山元町には129軒の農家がいたが、125軒が被災。
ハウスだけではない。
町の家屋の半分近い2500棟が全半壊、1万7000人が生活を送っていた町で、人口の5%にあたる600人以上が亡くなった。私のよく知っている人たちも、数えたくないくらい、死んでしまった。
小学校や中学校の同級生の家も、親戚の自動車も、通学に使っていた地元の駅舎さえも、津波はすべてを押し流した。
山元町の沿岸部は、みわたすかぎり、ガレキだらけの土地になった。
私たちは長い時間をかけてガレキをどけ、畑に溜まった泥水をかき出し、井戸を掘った。
そして整地したまっさらな土のうえに、小さなビニールハウスを建てた。
かまぼこ型のパイプハウスを、手作りで。
2011年の、9月のことだった。
イチゴづくりを始めてから、もうすぐ3年になる。
最近ではメディアの方から「東北復興の旗手」という感じで取材いただくことが、多くなった。
■おもしろくて儲かる農業で、日本を変えよう
これから私は、農業ビジネス・農業経営に関心があるけれども情報がなくて困っている人たちに向けて、具体的なサンプルを、アプローチの仕方を伝えたい。
とくに先端的な農業や、経営としての農業に興味があり、事例を調査したり、これからアグリビジネスに参入しようとしている企業内起業家(イントラプレナー)のようなひとを想定している。
これを読めば、それぞれが農業に対するビジョンが描けるようになるはずだ。
私は、日本の青年農業人口を1万人単位で増やしたい。
それが日本を変えるからだ。
農業といっても、畑に出て作業するひとだけが必要なわけではない。
農家をサポートし、お金をまわし、おいしい食べ物を消費者に届けていくためには、マーケティングやブランディング、ファイナンスや流通に関わる人材が、もっともっと必要だ。
農業に関わるひとが増えれば、日本が抱えている社会問題のいくつかが、解決できる。
農家が増え、農業ビジネスが活発になれば、地方や途上国に雇用ができて、日本が、世界が元気になっていく。
もちろん、かつての私のように、農業に対する不安や疑問がたくさんある方も多いと思う。それについてもひとつひとつお答えしていこう。私みたいに農業経験がまったくなかったIT出身の人間でもできる。
農業は、儲かる。
経営者として10年以上やってきた私の目からみても、そう言える。
そして、農業をやるのはむちゃくちゃおもしろい。
どういう手順で、何を考えて、どんなふうにやっていけばいいのか、そのノウハウも惜しみなく伝えていくつもりだ。
誰だよお前? という方も、たくさんいらっしゃることだと思う。
そういう方のために、そもそも私がどんな人間なのか、震災のあと何をしてきたのか、みなさんの参考になるようなかたちで、話していきたい。
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